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毎年、この時期になるとバレーの試合前の茶番にビキビキさせられるとですよ^^^^
たっくもーどこのショーだ。相手の国の選手さん苦笑い浮かべとるわ。あーもーなにこの恥ずかしい国。

続きー。
大漢風の続きで、今本場じゃ武帝のお話をやってるのねー…この人までは高祖の血を感じるよなぁ(笑)
劉秀は聖人君子だし、献帝にはもう見る影も…本当に子孫かは怪しいけど、やっぱり劉備はそっくりだなぁ。結構いい加減なトコとか、ヘタレなトコとか。関羽張飛諸葛亮のポジションもしっくり。


笑う姫君 9



***


代での反乱が伝えられてからの劉邦の行動は迅速だった。
愛する息子の身に降り懸かった災厄と、信頼を置いていた部下のあっさりとしたまでの裏切り。今までで一番の不安と怒りに襲われたに違いないのだが、それを押し殺して討伐軍を練り上げてみせた所こそが彼を王者たらしめるものの一つなのだろう。


「心配ないぞ戚、如意は必ず無事でおるからな」


真っ青な顔をして小さく震えていた戚夫人は同様に震える唇ではいと頷いた。この様子では彼女が討伐軍に従軍するのが不可能なのは誰の目にも明らかで、劉邦自身が彼女は都に留まるようにと諭したのだった。
代王である如意は反乱者に真っ先に殺されてしまってもおかしくないように思えるのだが、劉邦の腹心達によって守られひっそりと身を隠しているらしいとの伝令があった。しかし代の地は匈奴の者がのさばる北方に面しており、小数の者が長い間幼い皇子を守り通せるとは到底思えなかった。
これは劉邦に苛烈な行軍をさせるに十分な理由となり得る。それが陳キの詰めの甘さを表すのか、知っていた上での幼子に対する情けのどちらを表しているのかは計りかねたが。

かくして官軍は陳キ軍の討伐に出立。従来通り、都の留守を預かるのは太子である劉盈と彼の管轄する衛軍。
普段と異なった点は従軍を求められた韓信が病の中にあるという理由で討伐軍への参加を断ったこと。そして、官軍が代の地に入った頃一人の男が久しく足を踏み入れることのなかった宮殿の扉を叩いたということだ。






「珍しいこともあるものね。どういった風の吹き回しかしら、張良?」


目通りを請うて暫く待たされた後に通されたのは后の使う謁見の間だった。私を呼ばれて、呂后は上座に腰掛けたまま唇の端を吊り上げるようにして笑った。お顔を拝見するのは何年振りのことだろう。以前湛えていた婉然とした美しさは消え、痩せ細り目の回りが蒼くかげってしまったその容貌から、この数年のあいだ彼女の受けてきた心痛を計り知るに十分だった。


「我が君ならば既に遠い代の地、軍師を名乗るならばあの人の傍にいなければ駄目よねぇ。あの女ですら、図々しくも戦地まで従い行くだけのことはするんですから」


ねえ、と左右に振れば控えた官達が静かに頭を垂れる。呂后と戚夫人が二代皇帝の後見を争っていると聞いたが、この様子を見るに重臣達の意が彼女にあることは明らかだった。


「…まことおっしゃる通りにございます。しかし、この病んだ身でお供致しましても陛下の御為に十分な働きは出来ますまい。
今の私に出来まするのは呂后様を始めとする尊い身を守る手伝いをさせて頂く事のみと考え、この度は出仕した次第にございますが」

「ほお…?」


少し前まで私を揶喩する態度を崩さなかったのが、少しばかり心動かされた様子で片眉を上げて首を傾げる。不遜な、まるで王君のような態度。慎ましく陛下に仕えていたあの人の面影はもうそこにはない。


「…世が依然として定まらぬ頃、私は随分と間者を抱えて使役しておりました。もうその殆どは機能してはおりませんが、残った者が時たま私を慮ってか要事となるとわざわざ知らせを届けてくれるのですよ」

「だから、何を伝えたくて貴方はわざわざ私の前に居るっていうの」


いらいらと手に持った如意棒を細い指で弄る。彼女の右には蕭何殿が、左には将軍職に付けた弟達が、人払いをしているからこの場にはいないが奥には幾人もの女官が侍っている。これでは、まるで。
首をもたげた不快の念を殺して伝えるべきことを伝えてしまうために口を開いた。


「陳キの反乱は囮です。その隙を突いて太子や貴女様を捕え、都を制圧せんと企てている者がおります」


ざわと左右の者が波立つように揺らいだ。一人、蕭何殿は石のように冷たく押し黙ったまま続きを促すように私を見つめていた。呂后は目を見開き唇をわなわなと震わせて小さな声で「子房」と私の字を呼んだ。


「そんな…だって子房、あの人の主軍は今この都からずっと遠い所にいるのよ?そんな事有っていいわけないじゃない。一体何処の痴れ者がそんなこと考えてなんて…」


「韓信です」


今度は打って変わって水を打つような静寂。呂氏の一族の者は皆紙のように真っ白な顔をして立ち尽くした。蕭何殿でさえ怒りや、戸惑いをない混ぜにした表情を一瞬浮かべたのを私は見逃さなかった。


「韓信元帥が、国を奪う謀叛を企てております」

「嘘…」

「呂后、十中八九は張良殿の申される通りかと」


初めて蕭何殿は口を開かれて進言した。


「元帥宅に忍ばせておいた間者から、少々不穏な動きが見られるとの報告が今朝方あったばかりです」


この相国は元帥たる男にも常に監視の目を光らせている。では、先程浮かべた焦燥はこの事実をどこか認めずにいたかったという彼の胸の内の現れか。
帝国の樹立に多大に貢献してみせた無双の兵法家の謀叛。その男が本気で私兵を率いて僅かな衛兵しか備えていないこの都に攻め寄せたら。カリ、と呂后が爪を噛む音を聞いた。


「それが分かったからって、私達だけでどうにかできることじゃないわ…あの人に引き返すよう頼んだって決して間に合いやしないし…それ所じゃないわ、事が露見したことが分かったら今すぐにだって攻め寄せるに違いないじゃない…」


才女は頭を抱えてぶつぶつと現状を省みた。肩書だけの官などよりも遥かに優れた頭脳と真偽を見抜く目を持ったこの人は過去に何度も劉邦殿の間違いを諌めては正しい航路を示してきた女傑だ。その呂后が豪奢な上座に腰掛け、如意棒をいらいながら思案に耽る様子は陛下とは毛色の違うある種の迫力があった。
何か打開策を、と言っても今となっては韓信殿を呼び出しひそかに殺してしまう事ぐらいしか最悪の事態を避ける手段は残されてはいないのだがあの賢い男がそれに応じるとはどうしても思えなかった。


「呂后」


不意に、蕭何殿が声を上げた。俯いた顔をゆっくりと上げたその瞬間、瞳に妖しい光彩が灰神楽のごとくちりちりと躍っていたのを私は確かに見た。


「私に…お任せ頂けませんか?」


この人の瞳がこうやって光る時、彼の脳髄がひどく怜悧な方向に働いていることを知っているのはこの世にきっと、私と韓信殿だけだ。








「戚様がいらっしゃらない?」


頼まれていた肩掛けが織り上がったのでお渡ししようと参上してみたものの、室に居たのはおろおろとそこら中を行き交う女官達ばかりだった。


「僻疆様、どこか心当たりはございませんの?」

「いえ…私めには…」


この数年、自分から戚様と必要以上に関わることを避けていた所もあったためそういった事は何も分からなかった。


「待ち望んでいた陛下の勝利の報が昨日届きましたのに…夫人のお顔は晴れなくて」


取り敢えず絹の羽衣を手渡して私はその場を離れた。一介の侍従である小僧に何が出来ようか。しかし、戦勝の報が届いたにも関わらず未だ沈んだままであるというのは些か気になることだった。

想像していたよりもずっと早くに討伐軍の勝利を伝える報が届いた。凱旋する陛下を迎える準備であるとか、戦勝を寿ぎにくる諸侯らへの対応に追われて宮中は普段の落ち着いた様子からは打って変わった混乱に満ちていた。
そういえば、需品官の一人が数日前に控えの間で父の姿を見たと言っていたか。今までの反乱はいつだって陛下が凱旋されても寿ぎの書簡を一片寄越すばかりで参内することなく屋敷に篭りきりだったのに。

陳キ将軍の突如とした反乱に動くはずのない父の突然の参内、そして予想を大きく上回る早さで届いた戦勝の報。どこかが、おかしい。


「っわ!」


俯いたまま門を曲がった先、出合い頭に何者かと衝突した。鼻先に思い切りぶつかった硬い青銅の感触。滲む視界を開いてみれば目の前に青銅片の鎧に身を包んだ武人が立っていた。


「か、韓信殿…」

「すまん、大丈夫か?」


この人も祝賀を述べに参上していたのか。元帥の正装に身を固めた彼は普段のとは違う張り詰めた空気を纏っていたが、それに反比例した青い顔色が気にかかった。


「元帥、お体の調子が優れないと聞いておりますが…」


それを理由に今回の遠征にも従軍されていない。知己である陳将軍の反乱による精神的なものかと思っていたのだが、この紙のように白い顔色はただそれだけが原因とは思えなかった。


「ああ…だが無理にでも参内した方が俺の為にもなろうと蕭何殿がわざわざ使いまで届けてくれてな」

「そうですね、私もそう思います」


今の韓信元帥の立場は確かに微妙なものだ。功積だけを見れば彼ほど陛下に貢献した人はいないのだが、陛下や呂后に一番恐れられるだけの力を持っているのも彼なのだ。友人であった陳キ殿の反乱の鎮圧を真っ先に祝う事で呂后に恭順の態度を示してみせる必要がある。


「呂后に頭を垂れることも、今の私達には必要です」

「あまりそのような事は口にせん方がお前の身の為だと思うが」

「構いません、呂后にとって私はその辺を駆け回る子舎人でしかありませんから」


私は今の呂后をどうしても好きになることが出来ず、そして何より私には幼い頃から構って頂いた戚様に対する恩の方が厚かった。例え、戚様の立場を支えているのが陛下のご寵愛のみの危ういものだと分かっていようとも。


「…あの、韓信殿。戚夫人を見かけませんでしたか?」

「夫人を?いや…」


不意に払いのけようとしていた彼女を案じる意識が私の中で頭をもたげた。目の前の宮中のことになど疎いに決まっている武人に思わず尋ねてしまったことを不思議に思った。


「もうすぐ呂后が広間で諸侯に目通るそうですのに、姿が見えないと女官が騒いでいたのですよ」

「そうか…まあ、一人になりたいという夫人の気持ちが分からんでもないが」

「はあ…」

「分からんか?」


韓信殿は随分と呆れた様子の顔をで苦笑された。


「何故、陛下の戦報に如意様についての記述が一切ないか?」

「あ…」


皇子の無事をあんなに案じていた陛下が書簡の中で一切その事に触れてはいなかった。無事に皇子の御身を保護したならば戚様にそれを伝えないはずはないのに。


「こういった事に鈍いのはお父上と一緒だな」

「そう…なのですか」

「そう、敵の心理や戦術はぴたりと当てられるのに人の心の機微に時たますごく疎い。…逆に陳平殿はそういったものに敏感だったな、よくそれを逆手にとったえげつない策を立てたりしていたよ」


義叔父上ならやりかねないと歪んだ笑みで応えたら韓信殿も同じような笑みを浮かべておられた。


「では…蕭何様は?」

「あの人も…人の心をよく掴む、情けで動かれる人だ。俺が今ここでこうしていられるのも、あの方のお陰に寄るところが大きい」


誠にそうなのだと思わせる先程よりも幾分か穏やかな表情で元帥は語った。その人の善意を無駄にしないためにもそろそろ俺は呂后に目通りでもしておこう。言って韓信殿は私の肩を叩いてから歩き出された。やはりその顔は相変わらず、白い。


「…韓信殿」

「なんだ?」

「貴方も…情けの人ですよね」


意外そうに目をしばたいて、いつの日にか見た自嘲げな笑みでこう答えた。


「さあ、俺にはもう良く分からん」


踵を返し、袍をはためかせ歩くその後ろ姿は孤高、国士無双の大戦術家。
私の知らぬ戦場の砂埃をその背は何者よりも濃く語っているように思え私は喉に渇きを覚えた。


「……」


この温室のような宮廷で温々と日々を過ごしてきたこの身は、明らかな時代の岐路に立ちながらも一体何をなすことが出来るというのだろうか。戦場を知らず、並べられるのは机上の空論ばかり。恩人の胸の内すら汲み取ることはできない。


「戚様…」


彼女をお守りするにはどうしたら良いか。その為に、私は陛下や韓信殿や父のような人間になればいいのだとはどうしても思えなかった。
私の目指すものとは。

鈍い、鐘の音が城中に響いた。

定時を知らせる鐘堂の鐘、太陽が中天を過ぎて少しのこれは西の鐘堂によるものだ。城壁の四隅と中庭に一つ据えられたその室は四つ角のものは時刻別で順に鳴らされ中央のものは儀式や年中行事にのみ使われるため、普段は庭の景観に溶け込むよう使われることなくひっそりと建っていた。
如意様は据えられた大きな錫の大鐘がお気に入りでよく連れて行ってと私や戚様にせがまれ―


「まさか…」


子舎人の私に一体何ができよう。
それでも、歩き出した足を止めようと私は思わなかった。




***

漢代の服飾・建築図録とかないかなぁ…唐代のものは良く見つけるんだけど。内輪ネタだけど“岩”の真意とかをちゃんと知りたい(笑)
とぅるっとぅー!


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