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―続きますように。
国歌の意訳見て感動してしもうたわあ…カッケー…!“そしてまた命の生まれくる時まで”
かぁっけー!(小学生)

ぴゃーさんの組曲「人間賛歌」がランキング入りしててディモールト・はっぴーうれぴーだったので、ハームフルボッコな楚漢ss投下しときます(脈絡もなにもあったもんじゃない、と)


***

ほんとに天へと続いていそうだと僕に思わせたこの北国の高い冬空にも、春を思わせるどこか優しい色彩が混ざり始めた。
浅黄のそら、背の低い牧草で萌黄に染まる平野。
めえめえと鳴く、かわいい僕の家族の背をゆっくりと撫でた。

ああなんて穏やかに、僕はこの地で過ごしていることだろう。


「あんまり大きな音を立てないであげて下さい。羊たちがびっくりするから」

「それは、失礼した」


頑強で肉食獣じみた輝きさえ瞳に湛えた馬に乗った男が僕の背後に大きな音を立てて鞍から降り立つ。
毛皮の外套、毛皮の帽子。天然石の装飾品をじゃらじゃらと、骨で出来た耳飾りも音を立てて鳴る。


「今日はどんなご用で?」

「貴様なんぞに用も何もあるわけがなかろう。遠乗りで近くまで来たのでな、暇潰しに寄っただけだ」

「はあ、作用ですか」


僕が何も面白い反応を示さないのが気に入らないようで、この匈奴の優れた将軍はふんと鼻を鳴らした。


「僕は…生きてるんだか、死んでるんだか。自分でも笑っちゃうような男ですよ。僕になんであれ期待なんてしない方が良い」

「ふん、生きながら死んでいる男か…そういえばそうだ。貴様、知らんだろうから教えておいてやろうか」


何を?と見上げた彼の顔は、やっと鼻を明かしてやれるといった得意そうな顔で僕は眉根に皺を寄せた。


「漢の皇帝が死んだよ」

「……そう」


僕の顔は酷く強張っていたようだ。彼は満足げな顔の後、少し憐れんだような表情をしていた。


「…兄貴……いや、劉邦は、幸せだったかな?」

「…お前がそれを言うか」


呆れた声を掛けた彼を見上げて、僕は大きく口を開けて笑った。ははははと、肺の中の空気が無くなってしまうのではないかと言う程に。


「はは…ッそうだねえ、何処まで僕は狡い野郎なんだろうねえ…」


ぱたりと後ろへと地面に寝転んだ僕を覗き込み、漢の人間はやはり分からんと毒づく彼にふふ、と微笑む。
毛皮の袖に包まれた手は北風と不毛の大地のせいでひび割れ、まるで棍棒か何かのよう。頬も赤らんでがさがさで、呂の姐さんが「赤子みたい」と笑ったそれは見る影もない。


僕は劉邦を裏切った。
僕は兄貴を裏切った。
僕は己の半身を切り捨てた。見捨てたんだ。

生まれた時から半身のようだった僕ら。本体はきっと兄貴で僕は影。
どんどんと加速する兄貴の世界に影たる筈の僕は追い付けなくなって、そして八方からのまばゆい光を兄貴が受ける日が来た時、影の僕は当然のように消えるしかなかった。
避けることの出来なかった決別?そうと言えばそうだったのかも。

あーあ。知りたくなかったから、こんな世界の果てまで逃げてきたのに。


「…今度、遊牧の民の歌、僕にも教えてくれませんか」

「俺は下手だ」

「僕も元からへったくそなんで問題ないですって」


妻でも娶れ、と言う彼にまた曖昧な笑い声で返して僕は高い蒼穹を見上げた。

ねえ劉兄。
僕はいま、この素朴な流浪の民と、羊たちに囲まれて確かに幸せを感じているんだよ。
兄貴は世界の真ん中に立って何を見た?
最後に何を手に入れたのかな?

僕はねえ、劉兄。
いつかこの地で死ぬその時には兄貴とガキの頃を過ごしたあの村の空を、最後に見るだろうと確信しているんだ。





***

友人間で「ハートフルボッコ」というお題が煥発されたのですが、私はどーにも「ハームフルボッコ」しか書けない鬱文字書きですってことを証明。うふふ…
露綰タソ一人称とかもしかして日本初なのではないかとハラハラのマイナーっぷり(笑)司馬遼項劉の露綰は切なかったなあ…ビジュアルイメージはぽっちゃりしたドッピオなんだけど(どんだけかと)
本文中の“彼”は多分、冒頓単于の部下の将軍さんかなんかではねーでしょうか…な?ん?(゜u゜)??
きっと露綰の裏切り劇に際して色々世話焼いてくれたんじゃまいか。な?

て、こんなんばっかで本編の方が全然何だが。
だって劉邦死なせたくないんだもんよおおおぉぉ!
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