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昨日は父の会社の同僚さんたちと花火大会に行ってきました~。
席がVIP席仕様だったので(でも河原の上のビニールシート 笑)特大花火だぞ~とみんなで楽しみにしてたのですが…
近すぎて花火玉の破片とか火花とかも飛んでくるって一体。
「キタァ!」の掛け声と共に花火爆撃をお盆やら紙皿で避けつつ、火花の直撃を喰らって「アチチィ!」とのたうつ同僚のお兄さん、飛ぶおつまみイカにビール缶。何この阿鼻叫喚花火大会(笑)
でもおっきくて綺麗で楽しかった~。終了後、明るいトコに出たらみんな顔が煤だらけで真っ黒でした(笑)



続き~。
この時代、花火はまだないけど爆竹くらいならあったのかしらん?
場つなぎながらちょこっと内輪の創作の子が顔出してたりしますが気にしないで~。


笑う姫君 11



****




「呂后から?」

「はい、高官の殆どの皆様に下賜されたとか…」


同梱されていたという書簡を彼女から片手で受け取りつつ、卓の上に置かれた翡翠色に光る小振りの瓶を見つめた。
早朝に突然使者がこれを携えてやっていたのだという。「縁起もの」と語って去ったというが、不意に起こる出来事に手放しで喜べることなどは少ない。


「開けてみて下さい、芙蓉」

「かしこまりました」


丁寧に縛られた口を慣れた様子で解き始める。彼女は使用人達の中でも秀でて手先が器用だった。
その間に恭しげな調子で書き出された呂后からという書簡に目を通すことにする。一体なんの意図があってのことか…先日の、韓信殿の粛清に対しての褒美であるというのなら理解はしていながらも不愉快で仕方がない。

陛下は圧倒的優勢にありはしているが、今も代の地で反乱軍と交戦中だ。双方に乱の首謀者である韓信殿の死は伝わっているはずなので決着はすぐにでもつくだろう。如意皇子の身柄も無事に確保されたと聞いている。


「あら…旦那様、食べ物です。燻製…豚肉かしら?」


彼女が包みを開き終えたのと、私が書状の内容から下賜品の中身を理解したのは同時だった。書簡から引き攣った顔を上げた私を彼女は訝しげに見て首を傾げる。その両手で抱える瓶を私は無理矢理に奪い取った。


「きゃ…ちょっと、旦那様どうなさいまし…」

「本当に狂ってしまったのかあの方は!」


窓辺へと足早に歩み寄り、庭に据えられた岩に向けて思いきりそれを投げ付けた。丁度、私が手を掛けた円窓の前を通らんとしたらしい馭者の隆が素っ頓狂な声を上げて跳びすさる。
大きな音を立てて瓶は中身とともに四散した。散らばったその肉片が食卓に上ろうものなら全く違和感なく溶け込もうであろう様相に私は強い吐き気を催してその場にうずくまる。


「ど、どーしたんだよ旦那…」

「旦那様…?」

「あれは…人の肉です」


芙蓉の瞳が驚きと戦慄に開かれるのが気配で分かる。


「人肉って…なんでそんな恐ろしいもん…」

「あれは彭越殿なんですよ」


私の口にした名に二人とも絶句したが、ややして状況を飲み込んだ様子だった。


「彭越様まで呂后の手に…」


少数先鋭による奇襲を得意としていた彭越殿。何度となく項羽軍の補給路を遮断しては陛下を死地から救ってきた。
度重なる功臣の粛清に己が命を危ぶんで陛下に申し開きをしたのだと聞いていた。武人の誇りを捨ててまで命乞いをした者がこのように悲惨な最期を向かえねばならなかったのか。呂后の人の所業とは思えぬ他者への警告の媒介と成り果てて。


「なぁ旦那、やばいんじゃねぇか?こー来たら、旦那が次に殺されたってなんの不思議もないぜ?」

「ちょっと隆さん、不吉なこと言わないで下さいよ!」


何の為に旦那様が平和になってからもこんな慎ましく暮らしてきたんだと思ってるんですか、と口早に言いながら芙蓉は庭に降り立ち散らばってしまった彭越殿を一つ一つ拾い始める。
質素な生活は自ら好んでの所もあったが、半分は芙蓉の言う通り予想された粛清を避けるために権力に対して無欲であることを示すためのものでもあった。しかし、何の野心もないことを示した彭越殿がこうなのだ。私自身も安全であるとは決して言えない状況にある。


「…韓信殿は、普段からこのような心地でおられた訳か」

「…旦那様?」


白い木綿の手巾に肉片を包んだ芙蓉が不思議そうに私を見つめるのをいいえ、と手で制した。


「あの、せめてこれだけでも私達の手で葬って差し上げて構いませんか?」

「勿論です。彭越殿も少しは浮かばれましょう」


ただし人の目に付かぬようにという私の言葉に、はいと頷いて恐れる事なくそれを胸に抱く。彼女は幼い頃に兄を秦兵に殺されている。いつも死者に対して人一倍の憐憫を以って接するのはそれによる影響が強いのだろう。
隆もまた秦に人生を歪められ諸国を放浪し続けていた男だ。
私が劉邦殿に仕えるずっと前に出会った彼ら。主人と従者の形をとっている今も、どこか気のおけない友人同士といった関係にあった。


「そういえば…旦那様、小爺(シャオイエ)…お坊ちゃまはいつお帰りになるのですか?お仕事にお暇が出たと聞きましたが」

「…今も陳丞相の家に置いてもらっています。ですが近日中には呼び寄せるつもりですよ」

「本当ですか?わあ、小爺にお会いするの何年振りかしら。大きくなられて更に旦那様に似ていらっしゃるでしょうね」


大好きなお料理を用意しておかなきゃ、と僻彊の乳母のようなものであった彼女は本当に楽しそうに微笑む。その笑顔に小さく笑みを刻みかけた時、遠くから隆が私を呼んだ。


「旦那、お客様だそうですぜ。呂釈之とかいう…」

「呂釈之殿…」


一瞬眉を潜めた私に芙蓉は目ざとく気付いたらしく不安げに顔を覗き込んできた。もしかして、と尋ねる彼女に小さく頷く。

―呂后の兄君がどうして私の所になど。


「分かりました、丁重におもてなしなさい。私もすぐに参ります」


二人は不安げに私の背を見送った。
私の内にあったのは不安感というよりはある種の鬱屈とした倦怠感だ。いつまでも中途半端に俗世と繋がり続けているの自分が不愉快なのだ。世を捨てるなんて事は国と深く繋がってしまった私には無理なのかもしれないと、韓信殿の誅殺に手を貸した時から分かってはいたのだけれど。






「いやいや、急に押しかけてすみませんねェ」

「いいえ、気になさいますな」


茶器の上げる湯気に霞む糸のように細い眼と耐えず震える長く爪を伸ばした小指。呂釈之、生理的に受け付けない男だと思いながらも決まり切った応対を返す。


「…今日は、拙宅に一体何の御用でございましょう?」

「いえね、先日は呂稚の…いえ、呂皇后の、ひいては我々呂家の命を救ってくれたでしょう?改めて御礼をしておきたく思いまして」

「いえ、そんな…」


貴方がたの為に動いたつもりはない。
旧友の手によって再び乱世を引き起こされるなんてことは御免だったから韓信殿の謀叛を阻止したのだ。


「これからも宜しくお願い致しますよ」


薄い唇の端を引き上げて微笑む。
現在、外戚として着実に朝廷内に権力を敷いている呂家。戦時中さしたる働きもしなかった彼らの厚顔ぶりに意識せずとも不快の念がむくむくと胸中に広がる。


「…ところで張良殿、陛下の謀臣である貴殿は陛下が一体どの御子を太子に立てるつもりかご存知ですよね?」

「…いいえ。道理と古来から続く建前で太子を選ぶのであれば呂皇后の劉盈様が選ばれるのが筋です。しかし陛下は戚夫人の子である劉如意様を太子に立てたいご様子だと伺っております」

「そうなんですよねェ。多くの重臣が諌められたのに陛下はお考えを改められる気はございません…」


不意に細眼に黒い瞳が宿った。同時に彼の纏う茫洋とした雰囲気が荒いものを含んだことに驚きつつ、一つ嫌な予感がよぎった。


「帝国の一大事に陛下の傍らに常におられた軍師殿がどうして枕を高くしたまま何もせずにいられるのですか?」

「…私は死地にて陛下を支えて参りました。いま泰平の世を向かえ陛下は愛情から太子を変えんとしております。それに私が口を挟むべきものでございますか?」

「…事によっては再び世が乱れるやも知れないのに?」

「それは、私の範疇外というものです。私の成すべき役目はもう終えていると考えていますから」

「左様ですか…」


俯いた頭が一つ溜め息を吐いてから上げたその瞳は確かに一瞬、三日月の形に歪んでいたように見えた。


「そういえば…張良殿、韓信を処刑した場に貴殿のお子さんも居合わせてたそうですねェ」

「それが、何か…」

「きっと錯乱してたんでしょうけど…何やら、剣を手に持って呂稚に向かおうとしたらしいって聞いてるんですよね」

「……」


否定できない。
確かにあの時、僻彊は韓信殿の剣を手に呂后へ切り掛かろうとしていた。制して取り返しのつかない事態は避ける事が出来たと思っていたのだが…やはり、他の者も見ていたか。
癖彊は職を辞させ、謹慎の形をとって陳平の私邸に匿ってもらっているのだが呂家の者の手にかかれば引き出されるのは時間の問題だ。


「あ、今朝届いたと思うのですが呂稚からの下賜品もう見てくれましたか?凄いでしょう、謀反人の誅殺をこんなに分かりやすく臣下に伝えられるなんて今までなかったでしょう」

「……四人の…を…」


あからさまな脅しに怒りも恐怖も湧かなかった。
ただ、神算操るなどと謳われた私が肉親を盾に取られて何の策も考え付かずこの俗物に従う事を選んでいるのを他人事のように可笑しく思った。


「はい、もう一度」

「…四人の賢者を召喚して、劉盈様にお付けなさい。
陛下を不品行を嫌って、何度召し出されても出仕しないでいる老賢者達がいます。立派な説客を使者に立て、劉盈様に心のこもった文を書かせ、宝物を送り立派な輿で向かえれば彼らも出てきましょう。
陛下は彼らを尊敬しておられます。その四人が劉盈様に付いておられるのを見られれば…」


一息にまくし立て、息の続かなくなった辺りで口を閉じ、俯き押し黙った。


「…なるほど、さすが張良先生だ!」


呂釈之は私の両手を手に取って、笑いながら大きく振った。


「早速手配させましょう…でも、その賢者を召し出すまで時間も掛かるでしょうし、その間に何か都合の悪い事があったら私達だけで対処できるか、ちょっと不安なんですよねェ…」

「…私自ら、出廷するのをお望みか?」

「え、いやいやそんな御苦労掛ける気は無かったんですけど…先生がそのつもりならお言葉に甘えてしまいましょうか」


心強い味方を得て、妹もきっと喜びますよと彼は細い眼を一層細めて笑った。


「全ては私達と貴方と、ひいてはこの国の為…ですよね?」

「…ええ」

「うんうん。さて、有用なお話が出来ました」


すくりと上座から立ち上がって、呂釈之は軽い足取りで席を立つ。


「では宮中でお待ちしておりますよ」


私は見送ろうともしなかったが構わず彼は退席していった。己の従者か私の家の者に何やら軽口を吹っ掛けながら笑い声を上げる、それが段々と遠ざかる。

頭が重い。
最近続いていた微熱が少し悪化したことを感じながら、情けなさに自然と歪んだ笑みを刻む。

不意に、先日何年振りかに見た戚夫人の怯え歪んだ瞳を思い出した。結局、私は彼女を打ちのめす事になってしまったのだと。




―英布殿が謀叛を起こしたのはそれからすぐの事だった。




****

呂釈之が張良を脅して~て史記に書いてあるけどさ、読む限り図々しくも慇懃無礼にお願いしてるようにしか読めなくて…一体全体どのへんが?だったので無理矢理脅してみた巻。
きっと本人だったら華麗にスルーしてみせるんだろうけど、私の貧弱な脳みそじゃ…こんなもん(苦笑)

こう並べてみると、短期間で反乱逃亡起こり過ぎ。
なんだこの帝国。
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日々をいかにポジティブに生き抜くかを目標に、少しの事でネガティブ観点に陥る、ありがち日本人。
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